存在しないはずの闇グラフが流通するワケ 御用学者:屋井鉄雄の統計不正

下のグラフは自転車店での平均販売台数の推移(平成15年を1とした比率)を表したものであるが、平成25年までである。
私は前回のブログで、「これにつながるグラフは存在しないし、作成もできない。」と書いた。
スポーツ自転車増加h25まで.jpg
ところが直後に、平成30年までの最新のグラフが専門誌に掲載されているではないか。
私もしっかりした理由があって書いたことなのだが、著名な教授によって覆されてしまっている上に、グラフの内容自体も平成27年にはスポーツ自転車の販売が、それ以前の倍近くに跳ね上がるなど好調で、私の考察を否定する内容になっている。
掲載されているのは、「北の交差点」という道路交通の専門誌である。
vol37.jpg
スポーツ車伸び屋井鉄雄グラフ.JPG
出典:一般財団法人 北海道道路管理技術センター発行 北の交差点VOL.37 2019 巻頭特集 自転車は「マイナスの3K」から「プラスの3K」へ 東京工業大学 副学長 環境・社会理工学院 教授 屋井 鉄雄 著
http://rmec.or.jp/activity/back-number/


著者の屋井教授は、静岡空港の需要予測の際に不適切な水増し予測で市民やマスコミから批判を浴びた人物である。
このグラフでも不当な水増しが行われていないかどうか、順を追ってチェックしてみよう。
グラフには引用について次のような記載がある。
資料:国土交通省「安全で快適な自転車利用環境創出ガイドライン」より引用、一部加工

では元になったガイドラインのグラフ(上)とこの専門誌のグラフ(下)を見比べてみよう。
自転車販売台数指数グラフ屋井比較用.jpg
下のグラフが今回問題にしている最新版であるが、不自然な点に気づかれただろうか。
平成27年以降が加筆されているのはともかくとして、それ以前の共通部分の折れ線グラフも引用元とは全くの別物にみえる。
さらによくみると自転車の分類が6区分から4区分に変わっていて、こうなると単なる一部加工ではない。

二つ目の不自然な点に気づいたあなたはえらい。
このグラフ、平成26年が抜けている。

三つ目はなぜか平成27年に全車種、謎の増加をしている点である。
特にスポーツ車は倍近い増加で1店舗のデータならともかく、全国的なこのデータが本当ならば自転車屋さんは笑いが止まらないのではないだろうか。
ブームに左右されにくい子供向けの自転車まで増加しているが、普通に考えれば少子化の影響で少しづつ減っていくのが自然と思われる。

グラフに不自然な点がある理由

その理由はこのグラフの大元になる自転車産業振興協会資料 年間総括を見ると分かる。
「自転車国内販売動向調査」の対象店舗の設計は、平成26年6月調査より従来の調査から大幅に変更になっており、従来の 調査結果との単純な比較はできない。(平成27年版2ページより)

資料の体裁やデータの集計方法が大きく変わり、「単純な比較はできない」と注意を促す記載があるにも関わらず、無理やり連続したグラフを作成したせいで不自然な部分が目立つのだ。平成26年が抜けているのも、変更があった年は年間総括が存在しない(作れない)ためである。

具体的な変更箇所は、まず調査対象の店舗が変更され、以前より大きな店舗を含むようになっている。
対象店舗1.jpg
大きな店舗を含めれば、平均の販売台数が増加するのは、当然と言えるし、品揃えも違うだろうから、売れ筋の傾向も変わって当然だと思われる。
これが、平成27年、スポーツ車急上昇のからくりである。

自転車の車種区分も大きく変更されている。
単純に細分化したのではなく、新たな区分が採用されているため、そのままグラフを延長することは不可能であり、屋井教授はオリジナルの区分を使い、一からグラフを作り直していたというわけだ。
区分の変更.jpg
私の方で、資料掲載のままの区分でグラフを作ってみた。
無論、平成25年と27年は繋げられないためグラフは2つになる。
近年、スポーツ車の割合は増えてはいるが、それはスポーツ車の販売台数が増えたのではなく、一般車が減少しているためである事が分かる。
スポーツ車は健闘しているとはいえ、最新の平成30年でも2割に達していないうえ、どちらかといえば台数が減少傾向である。
販売台数積み上げグラフ2点.jpg特に注視する必要があるのは一般車の減少のほうであると思うが、屋井教授のグラフでは不適切な処理のせいで全く伝わらないものとなっている。

得する人は誰なのか

こんなグラフどうでも良いと思われる方も多いだろう。
しかし、平成25年までのグラフは、とても多くの資料に掲載されたことや、屋井教授が多くの会議に参加していることを考えると、これから広まる可能性は十分にある。グラフは長期間かつ最新版の方が説得力があるからだ。
このようなグラフによって利益を得る人は誰なのか。
まず考えられるのはスポーツ自転車の愛好家である。
サイクリング向けの道路整備を後押しする根拠になるだろうし、市街地の道路整備でも、スポーツ自転車を中心に考えようという声が大きくなる。
ちなみに屋井教授は、ITmediaの記事によれば、本格的なサイクリストのようである。
検討会委員長を務める東京工業大学大学院の屋井鉄雄教授自身、筋金入りのサイクリストであり、他にも思い入れの強いメンバーが多い。(ITmediaビジネスオンライン2019年7月31日)

他に、自転車について考える有識者や行政にとっても、メリットが生まれる。
自転車は物理的に考えて、歩行者とも違い、クルマとも大きく違う。
行政にとって、自転車のための走行空間を整備するのは大変面倒でアタマの痛い問題である。
スピードの出る自転車が増えていることを理由のひとつとして、「クルマの仲間だ。」としてしまえばこんなにラクチンな事はない。クルマの走る場所はすでに整備済なので、車道を走らせるための啓発だけで、大体は片付いてしまうからである。
つまり屋井教授にとって、プライベートと職務上の両方でおいしいのがこのグラフという訳だ。

屋井教授はこの専門誌のインタビューのなかで、「行政だけでなく多くの利用者や関係者に計画立案段階から参画してもらい、実行にも協力してもらう必要があると考えます。」と述べているが、一枚のグラフは時として1万人の意見をも否定できるから、たちが悪いのだ。

これは統計不正である

今年も余すところ僅かとなったが、厚労省の統計不正が明るみにでたニュースは記憶に新しい。
全数調査すべきところをサンプル調査で済ますなどの杜撰な処理が行われていたのだ。
政権にとって都合のよい結果を出すための意図的な行為ではないのかという追及もあったが、そこまでの事ではなかったようだ。
今回取り上げたグラフは杜撰というよりも、内容をよく理解した上で頭をひねって、普通よりも複雑な手順を採らねば作成できず、計算ミスや手抜きとは一線を画す。
より悪質な不正と言って良いだろう。
統計は飛行機の計器のようなもの。良かれと思って目盛りを改ざんしてしまうと、後に状況が分からなくなり、進路を見失ってしまう。
来年は少しでも自転車関係の施策が正常なデータを元に議論されることを願うばかりである。

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過去の屋井教授関連記事

自転車左折事故の定説が信じられない7つの理由
~車道走行の安全神話~鈴木美緒 屋井鉄雄論文を検証
https://otenbanyago.at.webry.info/201609/article_2.html

千石交差点 不可解な自転車事故の減少
https://otenbanyago.at.webry.info/201502/article_4.html

自転車ナビライン千石交差点の資料を検証する(1)
恣意的な国交省報告
https://otenbanyago.at.webry.info/201411/article_1.html

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