クルマ離れ、そして自転車の活用は始まっているの?(後編)むしろ危惧される自転車離れ

前編中編で紹介したデータをもとに読み解くと、軽自動車が押し上げる形でクルマは増えていて、自転車は軽快車の利用が減少する形で減っているらしい。
その理由をもう少し深く考えてみよう。
軽自動車が増えている理由については、クルマは日本の基幹産業であり、人気商品でもあるため、その動向を考察した記事、書籍には事欠かない。
税制や景気の影響もあるだろうが、一言でいえば商品力の向上が大きいそうだ。

使いやすさを真剣に考えている

前編で触れたように、クルマを運転することは昔よりもずっと易しく、そして安全で安心感の高いものになっていることから女性や高齢者の利用が増えている。
オートマ、パワステ、ブレーキアシスト、ABS、力のいらないパーキングブレーキ、カーナビ、エアバッグ、ドラレコ、後方モニター、スマートキー、プッシュボタンスタート、UV&IRカットガラス、さらに先進安全装備など、書ききれないほど多様で速い進化を続けている。
メーカーは、特に女性目線での開発に力をいれているが、なかでも軽自動車は、小型で小回りがきくため、買い物などの際に運転や駐車がしやすいこともあり、新車購入の3人に2人は女性(1)、クルマの台数を増加の方向へ押し上げている。
軽自動車最近の使い勝手.jpg
現在の人気はスーパーハイトワゴンで、子供を抱っこしていても自動でドアが開き、後部から運転席へ移動ができたり、低床のため誰でも乗降りしやすく、軽なのに車椅子、ママチャリまで乗せられるなど、子育て世代、さらに高齢者がいる家庭にとって使いやすい機能が豊富だ。

昨年の販売台数BEST3は下の写真の3車種である。
現在ではBEST5までが軽自動車というほどに軽が売れているのだが、いずれも収納力を表現するのに、ママチャリを載せた写真をカタログに使っている。 その理由をご存じだろうか。
自転車積載可能軽自動車4.jpg
その理由を知って私は驚いてしまった。
ここまで利用者の気持ちに寄り添って開発しているのかと。
正解は、サンケイビズ(2)の記事を引用しよう。

自転車で通学している中学生や高校生の娘がクラブ活動や塾で帰りが遅くなると、心配になった母親はクルマで迎えに行く。だが、ほとんどの軽は、女性の力では自転車を積み込めなかった。娘は翌日に自転車がなくては困るので、親の言うことを聞かずに夜道を無理して自転車で帰ってくる。

答えは、たまたま自転車が積める大きさだったからではなく、利用者のニーズを調べたうえで、ぎりぎりその大きさにしてあるのである。
大きさに限りがある軽自動車の収納スペースを広くするのは簡単ではなく、そこには不可能を可能にするような挑戦があったという。
同様に車椅子が載せられるクルマも増えているが、特別な専用車ではなく普段使っている軽自動車に積めるところがミソである。
ダイハツでは、高齢者が使いやすいかどうかを、産学共同で研究していて、高齢者の移動の自由を広げることに力を注いでいる。
実際に高齢者の声を聴くと、開発者の考えとはズレがあり、改善につながっているそうだ。
高齢者用装備タント.jpg
小中高生が自転車で夜間に移動したり、高齢化が進んでいるという日本ならではの事情に向きあい、まさに日本だけの優れたガラパゴスカーをつくっている。
なんだかクルマの宣伝のようになってしまったが、自動車評論家もこういったニーズに合わせた開発姿勢を高く評価している。
軽自動車だけは、常に日本のユーザーに寄り添い続ける。日本における車の使い方を見据えて開発され、なおかつ軽自動車はライバル同士の競争も激しいから、商品力の向上も著しい。
ベストカーWeb 2019年4月26日

一方で、数少ない自転車の評論家はどうだろうか。
日本で過半数の人に利用されているのはママチャリである。
低フレームなので高齢者や女性でも乗降りしやすく、荷物もたくさん積めるママチャリは、軽自動車と似ている部分もあるが厳しい評価を受けている。
自転車はクルマの代用とならなければならない。つまり「スピードがだせなければならない」のだ。その上で、気持ちよく、健康に貢献しなければならない。この用途にママチャリは適していないのだ。
だからこそ私はあえて言う。日本人たちよ、もはやママチャリに乗っている場合ではないのだと。地球をこれ以上汚さず壊さず、次の時代を走り抜けるには、ちょっと高価な、スポーツ自転車に乗らなければならない。
疋田智著 それでも自転車に乗り続ける7つの理由 第1章より

日本の事情にあっていて大勢の人に利用されているママチャリを、日本だけのガラパゴス自転車として非難しており、利用者の話を聴こうという気はさらさら無いようだ。
ママチャリがなぜ日本の事情に合っているか、なぜ誰にでも使いやすいかは以前、記事にしたのでそちらをお読みいただきたい。

安全性について

クルマのCMを見ていれば分かるが、いかに安全性能が優れているかを短いCMのなかに詰め込んで宣伝している。
タントCM安全装備.jpg
現在では安全性能の劣るクルマは売れないそうだ。
トヨタだけでも実車を使った衝突実験は、年間約1600回。
クルマの安全評価には公的な基準があるため、簡単に他のクルマと比較できてしまう。
軽自動車の評価基準が劣る時代もあったが、現在では、白ナンバーの乗用車と同じで、時速50kmでの衝突実験がおこなわれている。

映像をみると、素人目にもなかなかの防護性能を持っていることが分かり、感動的ですらある。
6割以上の人は、オプションであってもサイドカーテンエアバッグを装着した状態で購入(N-BOX)しているとのことで、安全に対する意識が高いことが窺える。

一方で自転車はどうだろう。
自転車の場合はクルマと違い、本体での安全性向上は難しいため、走行空間が重要になってくるが、この国の施策を動かしているのは、ガードレールなどで護られた歩道ではなく、トラックなどに近い車道を生身の体で走れば、クルマからも認知されやすいため、追突されず、7倍も安全になるという、魔法のような安全対策である。下図の出典(3)
section02-img03.gif
到底、多くの人に受け入れられる訳がなく、怖くて外出機会が減ってしまうのではなんの意味もない。

データから危惧されること

愛車遍歴というテレビ番組を見ていたら、女性芸人の虻川美穂子さんが夫婦で出演していた。
虻川さんは免許は持っていてクルマもあるものの、怖くて一切運転はしていないという。ブログの内容から普段は自転車を利用していることが分かる。
しかし、ハンドルに触れずに半自動で駐車できる機能を体験し、「すごい」「あたし運転できるかも」と感動の声をあげていた。

統計によれば女性のクルマユーザーは高いペースで増えている。(4)
それも、自転車の車道走行厳格化が叫ばれた頃からである。
乗用車主運転者性別比率1.jpg
直近の10年間で軽自動車は400万台の増加。なかでも売りあげを伸ばすスーパーハイトワゴンがターゲットとしているのが「子育て世代」だそうで、使いやすいことから「高齢者にも広がってきた」という。(5)
自転車では、30~40代、そして女性の利用が減っていることと、ちょうど真逆である。
クルマは買物などの近距離利用が増えていることも分かっており、本来であれば自転車が得意とする領域で利用を伸ばしている。
自転車が減少している理由については、はっきりしたことは分からないが、自転車の居場所がないという話はよく聞かれる。
自転車車道危険ナビマーク.jpg
「歩道は、押して歩け」と言われ、車道は20トンを超えるトラックが60km/hで疾走する。(写真は国道20号、東京都日野市神明1丁目)
施されたのはナビマークという、おまじないのような対策だ。子供を乗せて走るのが不安な人は多いだろう。
いずれにしても、クルマが増えれば、それにより自転車に乗らなくなる人がでてくるのは自然な流れにも思える。
自転車活用推進本部では通勤での利用や、サイクルスポーツの振興に力を入れていて、自転車の明るい未来を信じて疑わないようだが、むしろ、もっと身近な生活からの「自転車離れ」を心配するべきではないだろうか。

もしかすると、一部の自転車愛好家の本音は、車道を大手を振って走れればそれで構わない、という考えなのかもしれないが、この世は結局は多数決によるところが大きい。
たまにしか通らない自転車よりも、割合の多いクルマの利用者の声の方が大きくなるのは当然であり、スポーツ車にとっても肩身が狭い環境になるに違いない。

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脚注

(1)日本経済新聞 2014年4月2日 朝刊11ページ
軽快走どこまで(中)店づくり女性目線で―子連れ配慮、車内広めに。

(2)想定以上に売れた「N BOX」 危機に見舞われると強くなる“ホンダイズム” (5/7ページ)
http://www.sankeibiz.jp/business/news/130206/bsa1302060631005-n1.htm

(3)新都知事とつくろう、TOKYO自転車シティ
https://cycle-tokyo.com/sp/

(4)2017年度 乗用車市場動向調査 - JAMA - 一般社団法人日本自動車工業会 20ページの「主運転者性別・未既婚【A】」より作成
http://www.jama.or.jp/lib/invest_analysis/pdf/2017PassengerCars.pdf

(5)子育て世代、高齢者、海外 軽自動車が狙う新3K市場:日経ビジネス
https://business.nikkei.com/atcl/NBD/19/depth/00267/





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