クルマ離れ、そして自転車の活用は始まっているの?(中編)自転車利用の動向

前編のクルマ編に続き、今回は自転車利用の動向を調べてみよう。

大震災でやむなく自転車通勤を始めた人たちが、やってみると満員電車より快適なこと、健康にも経済的にもメリットがあること、生産性が向上することなどに気づいて定着し始めた。
自活研 小林 成基 2019年コラム(1)

自活研関係者の記事などではポジティブな見方がならぶが、まず昨年発表の自転車保有台数をご覧いただこう。
自転車の場合はクルマのように正確に登録してあるわけではないので推測値ではあるが、自転車産業振興協会が各種データを元に統計学的手法で割り出したものである。
自転車保有台数2.jpg
このグラフでは2013年をピークにして減少を続けていることがわかる。
これだけでは、信頼できるか微妙なので他の数字もチェックしてみよう。

国内の自転車の流通量を示すために、よく用いられている「国内向け台数」といわれる数字がある。
国内での生産台数と海外から輸入された台数を合算することにより、国内で流通している自転車の台数が分かるらしい。
最初にこの数字を知った時は、国内で生産しても輸出してしまう分が計算されていないと思ったが、現在わが国において新車の輸出はほとんど行われていないため、これでよいそうだ。
国内向け自転車台数.jpg
国内生産、輸入ともに大幅な減少傾向である事が分かると思う。
特に軽快車(ママチャリ)の減少が目立つ
ただし輸入台数には電動アシスト車が含まれていないという難点がある。
これは貿易品目の分類上、電動アシスト車は電動のモーターサイクルと一緒の分類になっていて、個別の台数が不明なためである。ただし電動のモーターサイクル全てを電動アシスト車であると仮定しても、その輸入台数は2018年で32万台なので、10年で約300万台という減少分には遠く及ばない。
やはり軽快車、そして自転車の総流通量も大幅に減少していることは間違いないようだ。
一方で、スポーツ車は伸びていると思う方も多いかもしれない。
ロードバイクやクロスバイクなどのスポーツ系の自転車は、上のグラフの「その他」と「マウンテンバイク」に含まれるが、その合計も2011年をピークにやや減少傾向にある。
国や自治体の資料でスポーツ車が急伸しているグラフを見た!という方もいるだろう。
スポーツ自転車増加.jpg
出典:国土交通省資料 自転車交通 (2)
それが上のグラフで、これは店舗での販売台数の変化が分かるものだ。
これを見たら、有識者会議で「今後自転車計画をつくるなかでは速度の出る車道を通行できる自転車(スポーツ車)を対象に考えたほうがいいだろう。」(3)という意見が出るのも無理はない。
しかし、このグラフもやはりスポーツ車のピークは2011年で、グラフも2013年までしかない。
そして、このグラフはウソではないものの、かなりスポーツ車が目立つ表現手法をとっている。
大元の出典に掲載された販売台数を、素直にグラフにすると下のようになる。
自転車車種別販売台数.jpg
だいぶ印象が違うのではないだろうか。
なぜこうも印象が違うのか考えてみると、社会人の方はプレゼン技術が向上するかもしれない。
ママチャリ系が大部分をしめ、子供向けもスピードは遅いし、電動アシスト車も、勘違いしている人もいるが、スピード走行には向いていないことがほとんどである。
これを見たら「速度の出るスポーツ車を対象に」という意見は出ないだろう。
マウンテンバイクもスポーツ車として考えると2003年から2013年の間に1.5倍しか増えていないうえ、全体の13%しか占めていない。
これ以降を見たいところだが、残念ながら自転車産業振興協会では、統計調査の基盤になる店舗を大きく変更してしまったため、これにつながるグラフは存在しないし、作成もできない。
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次に、自転車部品大手のシマノが投資家向けに公開している報告書(4)の中の、国内販売状況について書かれてある部分を紹介しよう。

2016
日本市場では、昨年まで好調を維持してきたスポーツタイプ自転車の店頭販売は前年を下回り市場在庫はやや高めとなっています。軽快車の店頭販売は昨年に引き続き低調に終わりました。
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2017
日本市場では、スポーツタイプ自転車及び軽快車ともに店頭販売は精彩を欠きましたが、市場在庫は適正なレベルを維持しました。
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2018
日本市場では、年初の寒波に始まる天候不順や自然災害の影響もあり、スポーツタイプ自転車及び軽快車ともに店頭販売は振るわずに推移しましたが、店頭での電動アシスト車全体の販売の伸張の中、特に電動スポーツアシストバイクへの注目度が増しました。

シマノはいうまでもなく自転車部品の最大手であり、ロードバイクからママチャリまでほとんどの自転車に関わっているが、なかなか厳しい総括をしている。特筆したいのは天候を理由に上げている点で、近年、猛暑日や豪雨などに悩まされているなかで、自転車の利用を控える人が増えてもおかしくない。

ロードバイクファンの方のブログでは、専門店の閉店やスポーツサイクル系のイベントの来場者の減少を嘆く声も上がっている。
サイクルモード来場者数推移2019.jpg
ここまでのいくつかの資料を見る限り、スポーツ車のブームが存在し、現在でも健闘はしているが、右肩上がりが続いているとは言えなさそうだ。
自転車ジャーナリストの仲沢隆氏は、インタビューの中で過去にも二度のロードバイクブームがあったことに触れ、「二度ともブームが衰退した理由は、日本に自転車を走らせる環境がなかったことに尽きます。向こうでは、道路に自転車専用のゾーンがありますからね。」と答えている。(5)
今回は質の高いサイクルルートの整備を進める動きもあるので、盛り上がる可能性もあるが、全国的にみると数は少なく、また、このブログで着目しているのは、日常生活での移動手段としての自転車利用なので、休日にスポーツとしてのサイクリングやレースをする人が増えることは歓迎したいが、そういった施策ばかりに予算がまわり、生活に密着した利用が軽視されるようでは残念に思う。
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自転車シェアリングについて
ドコモシェアバイク.jpg
街中でシェアサイクルを見かけることも増えてきた。
正確な台数の推移は分からないが、それぞれの会社が公表している台数やポート数から推察するに、大雑把な計算だが東京都で1万5千台位ではないだろうか。
乗用車のレンタカー3万台・カーシェア1万台に比べると少ないが、利用が急増していることや、小さいスペースでも設置できることを考えると、今後も増えていくと思われる。
ドコモの広報によると、1回30分以内の利用がほとんど(6)だといい、車体の形状と合わせて考えると、スピードを出して長い距離を走るというよりは、電車では行けないラストワンマイルを埋めるものとして重宝されているようだ。
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最後に自転車産業振興協会が定期的に行っているアンケートを紹介しよう。
自転車保有率アンケート.jpg
自転車の保有率が4%ほど低下している結果がでており、ここまでの他の検証と合わせて考えると、この傾向は整合性がとれており、おそらく本当であろう。
保有している自転車の車種をたずねる質問もある。
自転車車種別保有者.jpg
やはり軽快車は減少。スポーツ車と電動アシスト車は一割に満たないものの増加している。
ただし、ひとつ前の質問で保有している人の割合が減少しているわけだから、%に変化がない車種でも実質保有者は減っていることになる。
自転車の使用用途をたずねた質問もあるが、6年前と目立った変化はなく、強いて言えば、「サイクリング」で3.6ポイント、「通勤」で2.4 ポイント増加している。
そしてもう一つ、大事なアンケート結果がでている。
自転車使用者性別.jpg
女性の自転車利用者が減少している点で、これは女性によく利用されているママチャリが減少していること、スポーツ車は女性にあまり利用されていないことと符合する。
同アンケートでは、9歳以下と30代、40代の自転車利用が減少していることも分かっている。
以上のことから、直近10年くらいの自転車の動向をまとめてみると、

・自転車は減少傾向にあると思われる
・特に軽快車の減少が大きい
・電動アシスト車は増加している。
・スポーツ車は健闘している。
・女性の利用が減っている。
・30代、40代の利用が減少。


これらの点をふまえて後編に続きます。

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脚注

(1)Cyclistが駆け抜けた平成<6>NPO自転車活用推進研究会・小林成基氏 「自転車活用推進法」が切り拓くもの<後編>
https://cyclist.sanspo.com/466288

(2)国土交通省 平成26年度政策レビュー 10ページ
https://www.mlit.go.jp/common/001259529.pdf

国土交通省 安全で快適な自転車利用環境創出ガイドライン 参考‐I-3 (pdf 140ページ)
https://www.mlit.go.jp/road/road/bicycle/pdf/guideline.pdf

(3)平成26年度 第2回「改訂京都市自転車総合計画の見直し検討部会」 議事概要
https://www.city.kyoto.lg.jp/kensetu/cmsfiles/contents/0000171/171852/tekiroku2.pdf

(4)株式会社シマノ 公式ウェブサイト 決算短信
https://www.shimano.com/jp/ir/library/cms/financial_reports.html

(5)Daily PLANETS
都市生活者のホビーとしてのロードバイク――仲沢隆氏が語る日本における受容史 ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.145 ☆
https://ch.nicovideo.jp/wakusei2nd/blomaga/ar608975

(6) 日経トレンディネット
利用者増えるドコモのバイクシェア 主な用途は通勤
https://xtrend.nikkei.com/atcl/trn/pickup/15/1003590/072601768/


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