クルマ離れ、そして自転車の活用は始まっているの?(前編)自動車利用の動向

自転車活用推進研究会(自活研)の本や記事を読んでいると、次のような主張が語られている。

自転車にとってこの(時速)25~30kmというのが、一番気持ちのいいレンジで、なおかつ一番有用なスピードとなる。
また、ここが重要なところだが、このスピードであってはじめて「自転車はクルマの代用となれる」。
自転車はこのスピードで車道を走るべきなのだ。暴走自転車も歩道上から一掃されるし、自転車はクルマの代用たり得るし、本来的な法律の遵守も達成できるし、結果としてクルマは減る方向に向かうしで、良いことばかりではないか。
2007年出版 疋田 智 それでも自転車に乗り続ける7つの理由 第5章より

自転車は車道走行によって、クルマの代用として成立し、利用が増え、環境・健康に良い素晴らしい方向に進むらしい。

本当にそうなるのだろうか?
ニュースにもなった自転車の車道走行厳格化から8年が過ぎた。
前回のブログで示したとおり、都内20本の幹線道路での調査では車道走行は2割程度と少数派で、しかも自転車交通量も減少している。
さまざまな統計から、前編ではクルマ離れ、そして中編では自転車の活用が始まっているのかを検証し、後編でそれらを総括してみた。

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クルマ離れって始まっているの?

ブームといわれる自転車とは対照的に、クルマの苦戦が伝えられている。特に「若者のクルマ離れ」といわれるように、若年層におけるクルマの人気低下が言われて久しい。
2018年 自活研 小林 正樹 自転車ブームを読み解く ~新たな価値観で見直される自転車~(1)

自転車はブームで、クルマは苦戦しているらしいが本当だろうか?
クルマの場合は自転車とは違い、厳格な登録制度があるため台数の推移を見ることができる。
自動車保有台数の推移.jpg

実は、皮肉なことに車道走行厳格化が報道された2011年からクルマの保有台数は増加に転じている。
これは軽自動車の増加が続いていることが大きく、軽以外の乗用車はおおむね横ばいである。
エコカー減税の影響もあるだろうが、2010年頃からクルマの価格が高騰していたり(2)、2014年には消費増税があったりと、逆風も強いなか保有されるクルマは確実に増えている。

自活研 小林 正樹氏は、「新車販売台数の低下」や「若者のクルマ離れ」などの根拠をもとに、人々のクルマに対する価値観の変化を記事にしているが、それらが本当ならばなぜクルマの台数は毎年過去最高を記録しているのだろうか?
そこにはあまり知られていない事実がある。

★中古車の販売台数が伸びている。

このブログは経済の話ではなく、乗り物の利用率の話をしているので、街中を走るクルマが新車なのか中古車なのかはどうでもよい。
小林氏は新車販売台数のピークが、30年近く前の1990年(年間777万台)でありその後低下していることを挙げているが、実はこれ以降、中古車市場が成長していることから、新車販売の不振ほどには、購入者は減っていない。(ただし、この数字は業者間の取引を含む)
自動車新車中古車販売台数推移.jpg
グラフからは平成不況やリーマンショックの影響が見て取れ、今もそれ以前の販売台数には持ち直してはいないが、保有台数は1990年から2018年の間に1.5倍にも増加していることから、クルマを保有する意欲の低下よりも、経済的な影響と、次の理由が強いと考えられる。

★クルマの寿命が延びている。

クルマの平均使用年数は4~5年のうちに1年くらいというハイペースで延びている。
乗用車軽自動車平均使用年数.jpg
クルマの販売台数が減っても、長く乗り続ける人が増えれば、街中を走るクルマは増えることになる。
前掲の販売台数が伸び悩んでいるグラフにこの数字をかけ算すると、おおむね増加傾向となり、保有台数の微増に説明がつくのである。

★若者のクルマ離れの影響は少ない。

2000年頃に言われはじめた「若者のクルマ離れ」も自活研が好んで使う言葉だが、調べてみると期待されているようなクルマ社会からの脱却の糸口になっていない可能性がある。
確かに大都市の若い男性においてマイカーの保有率が下がっていて、記事などで取り上げられることがある。
↓ 若者(世帯主が20代・30代)の自動車保有率の変化(1998年→2008年)(3)n1021690.gif
しかし、郊外や地方都市では逆に増加がみられ(3)、女性の保有率も増加傾向にあり(4)、あるいは保有はせずに家族との共用や(4)、レンタカー、カーシェアを利用する若者が増えている。
下のグラフ、左はレンタカー台数。右はカーシェア台数と会員数。
レンタカーカーシェア台数増加.jpg出典:(左)全国レンタカー協会HPより (右)カーシェアリングと若者のクルマ利用 - 日本自動車教育振興財団
現在では、カーシェアリングの会員数は160万人を超えていて(5)、20年間で減少した新車販売台数よりも多い。
若者のクルマ離れは、地域や性別を限定すれば事実だが、50代を過ぎると、逆にマイカーの保有率が以前よりも増加傾向にあるため(6)、この先クルマが減っていくような未来は予測できないし、事実なっていないのである。

免許保有者も増えている。そして、これからも間違いなく増える。

免許に関する統計もチェックしてみよう。
免許保有者も増加傾向にある。
下のグラフで分かるように若者の占める割合は低下しているが、30~64歳はあまり変わっておらず、特に高齢者が増加している。
もっとも人口構成自体がそのように変動しているせいもあるが、それ以上の変化である。
運転免許保有者数の推移3.jpg
クルマ離れという言葉が世にでた2000年代初頭の20代は現在30代以上になっているが、この世代の免許保有率は30代で93%と高く、最も保有率の高い40代(94.2%)と遜色がないので、結局、継続して免許を持たないライフスタイルを続けている訳ではないことが分かる。
その結果、全体的な免許保有者数は確実に増加していて、そして、これからも増える
なぜ先のことまで分かるのかといえば、鍵になるのは女性である。
女性の場合、55歳以上の免許保有者は約5割と少ない。
これは免許を返納したから少ないのではなく、昔は運転は男性の役割という傾向が強かったのである。
男女年齢層別運転免許保有人数.jpg
一方で20~54歳の女性の免許保有率は86%と高い
今後、この世代が歳をとるとともに、免許を持っていないシニア女性が、免許を持っているシニア女性へと移り変わっていく。
女性の中年以上の世代は人口ピラミッドでみても大きなウエイトを占めるため、若者がちょっとやそっと免許を取らなくなっても、日本には運転できる人が増えていくのである。
免許返納については、2018年で約42万人、75歳以上では免許保有者の5%で、年々増加しているとはいえ低い水準といえる。
先月、首相から高齢者向け安全サポート車の普及や限定免許の検討を急ぐよう指示がでたこともあり、今後は先進技術のサポートを借りながら運転を続ける高齢者が増えるのかもしれない。
イタルダの分析によると2030年頃になれば、人口減の影響で免許保有者も減少に転じるかもしれないが、免許保有率はその後も増加を続けるとの予測である。(7)

なぜ、女性のドライバーが増えているのか

内閣府の調査では、男性の自動車保有率が2005年→2019年の間に79.2%→76.9%と、やや減らしているのに対し、女性は40.9%→47.1%とそれ以上の差でアップしている。(8)
特に強烈なのが60歳以上の女性で、27.8%→40.6%と大きな変動をみせており(8)、「若者のクルマ離れ」なんかより、はるかにクルマの台数に影響を与えているこっちの現象にネーミングがないのが不思議である。
自動車工業会のアンケート【その車を主に運転している人の性別】でも同様のことが確認できる。
乗用車主運転者性別比率1.jpg
なぜ、女性のドライバーが増えているのかを調べてみると、女性の社会的役割の変化もあるが、クルマの運転が昔よりも、力を必要とせずに、簡単で、安全に行えるようになったから、というのが大方の見方である。
1996年以降は1世帯あたりのクルマが平均1台を超えていて、セカンドカー、つまり奥様専用のクルマを持つ家庭も増えている。
乗用車の主な使用目的.jpg
使用目的も買い物などが増加していて、クルマの有識者は次のように分析している。

近年、主運転手の性別や年齢は大きく変化しており、女性比率、高齢者比率ともに増加している。また、自動車の使用目的に占める買い物の割合が高まっていること、走行距離が短くなっていることも分かるが、自宅周辺で買い物をする際に自動車を使用する女性や高齢者が近年増加しているからだと考えられる。
「ファイナンス」令和元年8月号 自動車の保有と利用 杉山 渉/石神 哲人(9)

前編のまとめとして
・クルマは増えている
・免許保有者も増えていてこれからも増える
・特に女性と高齢者のドライバーが増えている
・軽自動車が増えている
・買い物など近距離での利用が増えている


このことは、自転車の現状と比較するときに大事な部分なので、できれば後半まで覚えておいていただきたい。
中編へ続きます。

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脚注

(1) 日本マーケティング協会
自転車ブームを読み解く ~新たな価値観で見直される自転車~  小林 正樹
https://www.jma2-jp.org/article/jma/k2/categories/387-mh150903

(2)日本経済新聞 乗用車、10年で2割高く 安全装備費上乗せ
https://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ09HRF_Q6A211C1MM8000/

(3)平成24年国土交通白書 第一部、第二章、第三節、図表169
https://www.mlit.go.jp/hakusyo/mlit/h24/hakusho/h25/html/n1232000.html

(4)若者は本当にお金がないのか?~統計データが語る意外な真実~
久我 尚子 著 光文社新書 126~128ページ

「若者のクルマ離れ」は本当か ライブドアニュース
https://news.livedoor.com/article/detail/8945134/

(5)カーシェアリング車両台数と会員数の推移 交通エコロジー・モビリティ財団調査
https://www.aba-j.or.jp/info/industry/8901/

(6)平成24年国土交通白書 第一部、第二章、第三節、世帯形態別自動車保有率 図表165
https://www.mlit.go.jp/hakusyo/mlit/h24/hakusho/h25/html/n1232000.html

(7)運転免許保有の有無別自転車事故分析
公益財団法人交通事故総合分析センター 研究部特別研究員 西田 泰
https://www.itarda.or.jp/presentation/15/show_lecture_file.pdf?lecture_id=77&type=file_jp

(8)内閣府 消費動向調査 主要耐久消費財等の普及・保有状況
※統計データは、二人以上の世帯(一般)と単身世帯と総世帯の三種類用意されているが、ここでは総世帯の数字を使用した。
https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&query=%E4%B8%BB%E8%A6%81%E8%80%90%E4%B9%85%E6%B6%88%E8%B2%BB%E8%B2%A1%E7%AD%89%E3%81%AE%E6%99%AE%E5%8F%8A%E3%83%BB%E4%BF%9D%E6%9C%89%E7%8A%B6%E6%B3%81&sort=year_month%20asc&layout=dataset&metadata=1&data=1

(9)財務省広報誌 「ファイナンス」令和元年8月号
自動車の保有と利用 杉山 渉/石神 哲人
https://www.mof.go.jp/public_relations/finance/201908/201908k.pdf

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