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zoom RSS 有名なあの図を検証する。自転車 出合い頭事故の危険性 

<<   作成日時 : 2015/10/14 20:51   >>

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今回は、自転車の車道走行の安全性が語られる時に、非常に多く引用されるあの図を検証してみる。
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出典:土木技術資料51−4(2009)「自転車事故発生状況の分析」 図-8
国土交通省国土技術政策総合研究所 金子正洋 松本幸司 蓑島治

自治体の資料や新聞、テレビ、書籍などにおいて、
自転車は交差点事故が7割、特に出合い頭事故が多いという統計を示すと同時に、この図を掲げ、車道よりも歩道が危険である事を効果的に説明している。

その例を3点ご覧いただこう。
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↑京都・新自転車計画 P30 (車道より歩道の通行の方が危険と書かれている。)
http://www.city.kyoto.lg.jp/kensetu/cmsfiles/contents/0000179/179704/keikaku.pdf

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↑毎日新聞2011年1月6日
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↑新潟市交通啓発資料
http://www.city.niigata.lg.jp/kurashi/doro/bicycle/soukou.files/keepleft.pdf

このブログでは、この図から一般的に歩道通行のほうが危険であると言えるのかどうか、検証してみたい。

最初に、この図のようなケースが自転車事故の何割くらいにあたるのかを考えてみよう。
多くの事故がこのケースなのであれば、この図の説得力は高いものとなる。
(以下、この図を図-8と呼ぶ)

下の円グラフが日本で起きている自転車対自動車事故の全容である。(平成23年)
図-8はこのうち歩道のある道路(信号なし交差点)に含まれる。
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出典:安全で快適な自転車利用環境創出ガイドライン P133
http://www.mlit.go.jp/road/road/bicycle/pdf/guideline.pdf

ただし、右左折時やその他の事故もあるため、全てが図の示す出合い頭事故ではない。

図-8を掲載した論文に次のような記述があるため、幹線と細街路で起きた事故のうち6〜7割位が図のケースに相当すると思われる。

幹線道路と細街路との交差点での事故
 東京都内の幹線道路のうち、ある15.2kmの区間を対象に、区間内の全ての細街路との交差点で2002年〜2005年に発生した自転車関連事故について整理した。
この区間では、4年間で合計146件の自転車関連事故が発生しており、この内、出合い頭事故が89件、左折時事故が40件、右折時事故が7件であった。


図は146件中の79件(54%)を図示している事が分かる。
また他の資料に載る下のグラフでも出合い頭事故は5〜7割である事を参考にして、
(出合い頭事故が全て図−8のケースという訳では無いのだが)
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おおまかではあるが円グラフに書き込み、歩道のある道路で起きた事故だけを表示すると以下のようになる。
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黒い部分が図-8の事故ケースで、あくまで推測だが、歩道のある道路で起きる事故の4分の1程度である。

「自転車事故は交差点事故が7割、特に出合い頭事故が多い」と聞くと、図-8のケースが占める割合をもっと多くイメージした方もいるだろうが、それにはトリックがある。
それは出会い頭事故は生活道路で比較的多く発生し、歩道のある様な幹線道路では5割以下である。(前掲の棒グラフ参照)
しかも幹線道路は信号交差点を多く含む。そこでの出会い頭事故は信号無視が主原因になるため、図-8とは関係が無い。
図-8のケースは意外に少なく、これだけの限られた一部分のデータで、全体的な歩車道の安全性について言及するのは不適切と言えるだろう。

しかし、しかし。 私が思うには実はもっと少ない、限られた状況を表していると思うのだ。

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ごっそりと抜け落ちている事故形態

今回取り上げている図-8。
これは具体的にどの場所のデータなのだろうか?
どの資料でも、「ある15.2km」などと表現し、なぜか記載はないが、これは東京都内の国道254号の調査である。
(なぜそう言えるのかは、少々複雑で本題から逸れるので、ブログの最後で説明します。)

都内の国道254号は、大部分(約85%)において中央分離帯がある。
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下の図は国道254号の中央分離帯のある部分だけを赤線で示した。(2009年のストリートビューや2000年頃の市販地図などで確認。信号のある交差点で分離帯が途切れている箇所は表現していない。)
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中央分離帯があると発生する事故形態が限定されるのだ。
分離帯がある場合、細街路に出入りする移動は左折のみの2パターンである。
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↓分離帯がない場合。右・左折、直進の6パターン。
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さらに、ニュースを良く見る方はご存知のとおり下図の様な自転車が横断中の事故も多いが、分離帯があれば当然発生しない。これも出会い頭事故なのだが、今回検証の論文では発生しないので、図-8の割合を高める事ができる。
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日本の歩道のある道路全てに中央分離帯があれば問題ないが、私の観測では歩道があって分離帯が無い道路の方が何倍も多いと思う。(もっとも正確な資料は見つけられなかった。)


中央分離帯の無い道路の例。
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細街路から右折してクルマが出て行く。

この右折してクルマが出て行くケースは二輪事故において危険性が指摘されている。
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シンク出版 朝礼話題より:http://www.think-sp.com/2015/08/19/tw-bikeday/

自転車事故の資料においても、このケースに限って言えば車道順走の事故件数が多い。(ただし通行量は不明、歩道通行が多いとするならば車道の危険性はかなり高い)
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出典:ITARDA第15回研究発表会資料
四輪車と自転車の無信号交差点・出会い頭事故の人的要因分析
https://www.itarda.or.jp/ws/pdf/h24/15_03deai-4rin.pdf

上図のケースは実際に私も時々遭遇する。
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駐車場や細街路から出てくるクルマのドライバーがこちらを見ていなくて、「これ大丈夫か?」と思うケースだ。
状況から「まだ発進しない。」と判断してクルマの前を通過する場合もある。
左折の時とはドライバーの注意する過程が明らかに異なっている。
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これはクルマのドライバーが右折のタイミングを見極めるために、左右のクルマの動きに気を取られ、比較的小さく車道左端を走る二輪を見落としてしまうという構図だ。
街路樹や電柱の死角にもなりやすい。
イタルダでは原付自転車に対し、極端な左端走行を避けるよう促している。

例えばだが、次のような事故も分離帯があると発生しない。
細街路や駐車場からクルマがでた後、そこへ別のクルマが入っていくパターン。出て行くクルマにより死角が出来る。他に駐停車車両による死角が事故原因になる事もある。
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有名なところではサンキュー事故、右方向からの出合頭事故なども分離帯が無い場所でのみ危険性が存在する。
右直事故(サンキュー事故)

これらは多々クルマの死角によって起きやすい。
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仮に、こういった事故は自転車では少ないという統計があったとしても、現在歩道通行が多い事で抑制されている可能性もある。
(ちなみに左折事故については出典論文に記載があるが、これも不可解な点が多く、別のページで取り上げた。)

分離帯の有無で、危険性がどう変化するのかは私にも分からない。
しかし、国道254号における4年分もの調査から、ごっそりと抜け落ちた事故ケースが存在する事だけは間違いない。

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都内の254号を歩いてみて


国道254号は文京区・豊島区・板橋区・練馬区を通る。
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(文京区内の国道254号 Google mapより)
以下資料にもあるが狭い細街路は多く、建築密集度は高く路地の見通しは悪い。

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文京区内には道幅が4メートルに満たない道路が多く、緊急自動車の乗り入れや消防活動の妨げになるおそれのある箇所が数多く存在します。---文京区
http://www.city.bunkyo.lg.jp/bosai/doro/jigyo/saigairo.html

大塚周辺は住宅主体の地区であり、一部では、細街路が多く、老朽木造建築物が密集するなど、防災上の課題を抱えています。---東京都都市整備局
http://www.toshiseibi.metro.tokyo.jp/bosai/70k1s108.pdf



他の地域、東京郊外や地方も同じように考えてよいのだろうか。
戦後に開発された地区では、法律上、あまり細い道路は作られないし、地域により交差方向の交通量や建築の密集度も違う。

いままで気にした事がなかったが、注意してみると私が住む郊外では、隅切りがしてある場所の方が多かった。(条例による。 隅切りとは:敷地の角を斜めにカットする事。見通しが確保される。)
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歩道上でも通行位置で危険性が大きく変わるように、おそらくこういった事で歩道の安全性は大きく変わると思われる。

そして、調査区間のうち池袋付近には自転車の車道走行が禁止され、歩道通行のみが許された部分もあった。
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↑国道254号にある軽車両通行止め標識
果たして国道254号は安全性を比較するのに適切な区間と言えるのだろうか。

中央分離帯が大部分ある事も含めて考えると、図−8のデータは一つの限られた地域、路線での統計として捉えた方が良いのではないか。
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図−8から本当に車道の安全性が高いと言えるのか

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特定の区間のデータだとしても、何しろ車道順走の事故は0件である。
少々の誤差を考えても、超圧倒的である。
調査した地域、事故ケースに限れば、やはり車道は安全なのか。

私はそうは思わない。
調査から年月は立っているが最近自転車レーンが整備された区間と、歩道の狭い新大塚近辺を除き、今なお歩道通行自転車の方が多い。

かつて超音速旅客機 コンコルドは世界でもっとも安全な航空機と言われたが、2000年7月に初の墜落事故を起こすと、他機種と比べて飛行回数が少ないため、逆に最も事故率が高い機種になってしまった。
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コンコルド シャルル・ド・ゴール空港保存機

それと同じような事が言えるのではないだろうか。
図−8と同様の事故ケースを扱った別の論文がある。

「自転車事故発生状況の分析と事故防止のための交差点設計方法の検討」
http://library.jsce.or.jp/jsce/open/00039/200811_no38/pdf/94.pdf
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それぞれの事故件数はさほど変わらないのだが、車道順走の事故が1件発生している。

件数では圧倒的な差があるが、通行量を考慮すると歩道の車道寄りの危険性は両方向とも、車道の1.1倍と大きな差は無い。(括弧内の数字を参照)
上図から算出すると、普段の交通量は車道順走部1台に対し歩道部34台となり、極めて車道を通る自転車が少ない場所の統計だと言う事が分かった。
つまり、車道順走の事故が1件増減しただけで大きく危険性が変動してしまい、とても信頼に耐えうるサンプル数を用意したデータとは言えないのだ。
それに、これらの事故には当然、他の事故原因が含まれる。
例えば自転車側、クルマ側どちらかの無灯火、携帯使用、飲酒などの場合、今回の分析テーマである〈歩道だから起きたのか?〉に対し適切な事故であるかどうかも考える必要がある。

そして、既に述べたように、単路部分や信号交差点等の危険性も含めて考えなければならない。

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重大事故が起きる可能性

私はこんなブログを書いている事もあって、ニュースで自転車事故を取り上げているとしっかり見るようにしている。
テレビで報道されるのは死亡や重体事故が多い。
ニュース映像の中に、現場検証をする警察官の姿が映し出されるが、この手の細街路から幹線に入るクルマとの死亡事故はほとんど見た記憶が無い。
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これは交通事故の死亡率にはクルマの速度が密接に関係しているためだと考えていい。
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出典:http://www.npa.go.jp/koutsuu/kisei/sokudo_kisei/research/H20houkokusyo.pdf PDFのP25
時速30kmを超えると歩行者の致死率が跳ね上がるのだ。
細い路地から幹線国道へ、時速30kmで飛び出すクルマを見た事があるだろうか?
せいぜい10km以下であろう。
そして逆に件数がいくら少なくても、時速50kmを超えるクルマが頻繁に走る車道部でのアクシデントは、死に直結するのではないだろうか。
この事に関しては下記のブログで詳しく検証した。

150件の自転車死亡事故を分析する(1)
http://otenbanyago.at.webry.info/201703/article_1.html
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双方向の危険性について

この図−8を見て、クルマと逆方向への走行が危険だと頭に焼き付けた方もいるかも知れないが、ではそういう方に質問してみたい。
「現実の生活で逆方向(図の右手)に移動したい場合、どうするの?」と。
車道順走を守るには必ずどこかで道路を横断する必要がある。
横断中の事故はニュースなどで非常に多いが、その危険性が含まれていない。
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比較的安全に横断できる場所まで車道順走で移動した場合、迂回する事になり、移動距離が増え、交差点の通過回数や追突など全ての危険性が増加する。
特に幹線道路同士の信号交差点は事故発生率が高い。
一方で歩道の逆方向への移動(車道寄り)は大して危険性は車道順走と変わらない。(前掲図-7参照)
この事については論文もある。

交差点通過回数を考慮した自転車の通行位置と進行方向による交通事故遭遇確率の比較分析 
立命館大学 小川圭一准教授 他
http://library.jsce.or.jp/jsce/open/00039/201211_no46/pdf/206.pdf

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まとめ

車道走行が歩道より安全である事の切り札のように使われる事もある、図−8であるが
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■円グラフで示した通り、歩道のある道路のごく一部の事故パターンである事。
■それも、分離帯の有無で事故形態は大きく変わるため、どこも同じ結果とは限らない。
■統計はサンプル数が少ない割に、通行量の差が大きくあるため参考になる比較はできない。
■細街路からは低速で進入するため死亡率は低いと思われる。

本当の車道、歩道の危険性は私にも分からないが、図−8からそれを論ずるのは困難と思われる。

車道を順走すれば、事故は0件。
こんなデータで諭され、皆、安心して走れるのだろうか。
私は一生自転車を利用していきたいので、車道、歩道に潜む本当の危険性を知りたいと思うのだ。



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ほ・そ・く

「どうして図−8が国道254号の調査と言えるのか?」

まず国道254号の調査と明記された神戸市の資料がある。
神戸市自転車利用環境総合計画http://www.city.kobe.lg.jp/life/town/road/20123003082901-5.pdf
PDF 28ページ
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しかし、数値が違うため、これが図−8と同じ調査とは言えない。
間に本文でも紹介した国交省論文の図を介する必要がある。
http://library.jsce.or.jp/jsce/open/00039/200811_no38/pdf/94.pdf
P2 図−7
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上記2点の図は表現方法は違うが、どちらも車道順走よりも車道逆走は約50倍危険。
歩道の車道寄りは1.1倍危険。
といった危険性が他も一致するため同じ調査によるものと言う事ができる。

では肝心の下の図−8は同じ調査に基づく物と言えるのか?
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事故件数も違えば、括弧の中の事故発生率も違う。
頭のいい人なら即答するのかも知れないが、私は少々手こずってしまった。

どちらも事故件数から交通量を考慮して、事故発生率を括弧の中に記載している。
つまりここには記載されていない、普段の自転車交通量という数値が存在する。
そしてそれは逆算して求める事ができる。
比較不可能な車道順走を除く、通行位置5区分の交通量の比が近似するため、上図2点は同じ調査に基づくものと言う事ができる。

つまり上図3点は全て同じ国道254号であると言える。

他に
■いずれも2002年から2005年の調査である事がそれぞれの資料に明記されている。
■「都市内の直轄国道(約 15km)」、あるいは「東京都内の幹線道路のうち、ある15.2kmの区間」といった記載がある。 
国道254号の都内延長は15,222mで、他に都内延長が15.2kmになる国道は無い。    
出典:東京都内の国道http://tossy.road.jp/pr/tmnrl.html
■図−7と図−8は事故件数が違うが図−7の論文に、出合い頭事故は全部で89件あった事が書かれており矛盾しない。


私の自転車に関するブログ記事です。

↓第1回 自転車は本当に車道のほうが安全なのか?
http://otenbanyago.at.webry.info/201406/article_1.html

↓第2回 車道走行の危険性を検証する。国土交通省資料のウソ
http://otenbanyago.at.webry.info/201406/article_4.html

↓第3回 自転車−車道と歩道の事故率 毎日新聞を検証(1)
ほとんどが歩道からの事故というのは本当か
http://otenbanyago.at.webry.info/201409/article_1.html

↓第5回 自転車ナビライン千石交差点の資料を検証する
http://otenbanyago.at.webry.info/201411/article_1.html




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