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zoom RSS 自転車が歩道通行の日本は海外比較で危険なのか。毎日新聞を検証(2)

<<   作成日時 : 2014/10/03 00:23   >>

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前回の続きです。

前回のブログ:毎日新聞を検証(1)
http://otenbanyago.at.webry.info/201409/article_1.html

この記事は前回の1面の記事と同じ日の社会面に掲載された。
早速新聞記事を読んでいこう。
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 自転車事故の7割超が交差点に集中し、その主要因は自転車の歩道走行にあるという分析結果が明らかになった。
国内の自転車乗用中の死者は年間1000人近くで先進国の中で突出。
欧州各国では道路幅が狭くても交差点付近の車道に自転車用通路を確保するなど対策が進んでおり、
国内でも同様の対策が急務となっている。【馬場直子、北村和巳】

新しい情報としては日本の年間死者が先進国のなかで特別に多い事が示されている。
これについては後で検証しよう。

 自転車の歩道走行は交通事故死者が史上最悪になった70年、車との接触事故を誠らすため例外的に導入された。
だが、40年余を経た現在、逆に事故多発の要因になるという事態が生じている。


70年の歩道走行導入の話がでているが、昔に導入されたものだから今では車道の方が安全とは限らない。
自転車利用者が死亡する事故が相次いだために導入された経緯を忘れるべきでは無いだろう。

例外的な処置のままで対策を怠ってきた行政は問題だが、それと統計科学的な比較は全くの別物。
導入した70年以降、日本の人口は増え自転車の保有台数は何倍にも増えていったが、
出典:http://www.jama.or.jp/safe/bicycle/pdf/bicycle.pdf
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歩道通行が可能になった頃から、自転車事故の死亡者は減少している。
(下のピンクのグラフが自転車の死亡事故)
古倉氏が言うように歩道走行が大幅(6.7倍!)に危険なら、70年頃を境にさらに死亡者は増加するのが自然と思われる。
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それまで車道を走っていたものが歩道走行に切り替わった時の方が、ドライバーの心理的な死角は大きかったのでは無いだろうか。

「車道で事故が増えたから歩道を走れ!」
「今度は歩道の事故が増えたから車道を走れ!」
また車道で事故が増えたら戻すのだろうか?
これではいくら何でも人間として知恵が無さ過ぎる。


東北学院大学 吉田信彌教授は、著書 『事故と心理 なぜ事故に好かれてしまうのか』や

論文記事(http://www.orsj.or.jp/~archive/pdf/bul/Vol.45_11_553.pdf)の中で
70年に歩道通行が許可され、それ以降、自転車の左折事故、死亡事故が減少した理由として、
トラックのミラーの改良やサイドバンパーの装着、運転手への安全教育など複数の要因をあげた上で、
■原付や自動二輪に比べ自転車の左折時死亡事故が大きく減った事
■特に左折事故は他の事故形態よりも大きく減少した事
■またその変化が歩道の整備率、通行率と対応する事
これらの事から歩道通行を評価していて、分析がこの新聞記事と矛盾する。

ちなみにこの時期、信号機が増えたから、自転車での死者が減ったとする反論もあるが、信号機によって主に減るのは出会い頭事故であって左折事故では無い。
もっとも吉田教授も歩行者との事故が増えていることから
「歩道を通行する自転車への新たな対策が必要」としている。

年間1000人弱 交差点の専用道整備急務
国内での自転車乗用中の死者(事故後30日以内)は、80年の1366人から08年は971人と約3割減だが、
同期間にフランスは715人から148人へと約8割も減少。
英国やドイツ、オランダも3分の1近くに減り、先進国の中で日本の死者は飛び抜けて多い。 
 欧州では自転車の車道走行を徹底する。さらにロンドンなどの主要都市では、自転車用通路を設置できるほど道路幅が広くなくても交差点やその付近にだけ車道に自転車のマークを付けて通行部分を明示したり、車の停止線の前に自転車の停止位置を設けている。
古倉氏は「こうした先進事例は日本でも参考になる。
自転車の存在を認識させることで事故は大幅に減らせる」と指摘している。

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世界各国の死者数や事故の増減率が書かれているが
こういった数字には例えば人口の推移や自転車や自動車の利用率、交通マナーの啓発など多数の事柄が関係してくる。

先ほどのグラフでみると日本では歩道通行が容認された70年代に死者が大きく減っている事が分かる。
逆に、海外では死者数が減少しているものの、歩道通行から車道通行に移行した訳ではないし、元々が高い危険性がある中で、日本より遅れて改善したのかもしれない。

本当に日本は自転車の死亡率が高いのか?
人口が大きく違う上に、自転車があまり利用されていない国と大多数の国民が自転車を活発に利用している国を事故件数で比較するとおかしな事になる。
極端に言えばほとんど自転車が利用されていない国は、死者も少ないため、お手本にすべき安全政策を行っている国となってしまう。

ついでに取り上げるが、下のグラフのような交通事故における自転車事故死者の割合が高い事を示し、「日本の自転車運転は危険」と主張する方もいる。
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出典http://www.mlit.go.jp/road/road/traffic/sesaku/genjyo.html
しかしよく見ると歩行中の死亡者も日本は特に多い。
アメリカは自転車の死者割合が2%と特に低い。
果たしてアメリカやフランスでの歩行や自転車利用は安全と言えるのか?
海外で生活した事のある方なら、それぞれの国で利用される交通手段の割合が違う事をご存知だろう。
例えばアメリカはクルマ社会で、子供はスクールバスや自家用車で送迎される事が普通だし、日本のように主婦達が徒歩や自転車でスーパーに集まる姿はほとんど見られない。

そして上のグラフは構成率なので、例え話だが日本政府が血の出るような努力をして自転車を含む全ての乗り物や歩行者の死者をそれぞれ10分の1に減らしたとしてもグラフに変化は無い。
実際に日本の交通事故死亡率は世界的に見てもかなり低いという報告もある。
出典http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/6830.html

これからの時代、衝突時の被害を抑えるボディ、エアバッグ等のさらなる発達・普及によって、自動車乗用中の死者が大きく減る事も予想される。
すると自転車乗用中の死者が割合としては増加する事になる。
こういったデータを利用して自説を通そうとする人間がいる事にぜひとも注意していただきたい。


下の地図は世界各国の自転車保有率を表したもの。
引用:ユーロモニターインターナショナル 2013年の調査
http://blog.euromonitor.com/2014/10/on-your-bike-global-bicycle-ownership-trends.html
濃い色の国ほど人口当たりの自転車を保有している世帯が多い。
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日本は世界第4位で、日本より上位なのはオランダ・スウェーデン・フィンランドの3カ国しかない。
しつこいようだがあまり自転車が使われない国で事故が少ないのは当たり前だ。

下のグラフは国別の人口一人当たりの自転車による一日の平均走行距離である。
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各国でここまで大きな開きがある。
出典:http://cyclinguphill.com/cycling-facts/
日本はこのグラフには載っていないが、ほぼ中間に位置し約0.42kmだそうである。

ほとんど自転車に乗らない国で事故が少なくてもそれは当たり前だ。
人口10万人当たりの事故件数にしたところで同じ事だ。

海外の交通省や研究者は自転車の走行距離あたりの死亡者数で他国との安全性を比較している。
下は4つ共その例である。
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出典
左上:http://drawingrings.blogspot.jp/2012/04/what-weve-got-to-learn-from-netherlands.html
右上:http://vtpi.org/puchertq.pdf
左下:http://cyclinginfo.co.uk/blog/734/cycling/cycling-rates-by-country/
右下:オランダ政府が発刊する「Cycling in the Netherlands」(Ministry of Transport,Public Works and Water Management, 2009)
http://www.fietsberaad.nl/library/repository/bestanden/CyclingintheNetherlands2009.pdf

ここでは左下のグラフからアメリカのデータを取り出し、
右下のグラフからヨーロッパ各国のデータを取り出し、
さらに日本のデータを加えてひとつのグラフにしてみたい。

日本では内閣府が平成21年の死亡率を算出している。
http://www8.cao.go.jp/koutu/chou-ken/h22/pdf/houkoku/5-1.pdf
それによれば日本の自転車乗用中の死者は1億キロ当たり3.59人である。
ただし日本の事故統計は事故後24時間以内の死者なので諸外国と同じ30日以内死者で計算し直すと4.82人となる。
30日以内死者933人÷年間総走行距離193.6781億km=4.82人
平成21年の30日以内死者数出典http://www8.cao.go.jp/koutu/taisaku/h22kou_haku/pdffiles/honpen/gs_4.pdf

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日本のランクはフィンランドよりやや良い位置でほぼ中くらいの12カ国中7位である。
これを基にして考えるならば、毎日新聞掲載の98年〜08年に諸外国で事故が減少した話は、特に危険な状態からようやく日本の安全性レベルに追いつきつつあると見ることが出来る。

確かに誇れるほど安全性が高い訳ではないが、日本は事故率に大きく関わる悪い条件をいくつも抱えている。

ひとつは日本はいうまでもなく高齢化社会で、
1980年頃から高齢化率は急坂を駆け上がってきた。
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単に高齢化がすすんでいるだけではなく、実際に高齢者が自転車を利用しているのは誰もが認めるところであり、海外旅行に多く行かれている方は、日本のようにジジババが自転車に乗っている国を思い出せないだろう。
統計でも各国に比べて高齢者の交通事故での死亡の割合が飛びぬけて多い。
出典:http://www.jama.or.jp/safe/bicycle/pdf/bicycle.pdf pdfのP38
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高齢者は認知力や判断力が鈍っているため事故を起こしやすい上に、事故に遭って同じ衝撃が加わった場合、その死亡率は、20歳代の2倍から3倍に達するという。

この高齢者と交通事故の関係については以下の警察庁資料が詳しい。
https://www.npa.go.jp/koutsuu/kikaku20120402/sansyo.pdf
p87〜p101
実際に自転車事故件数に対する死者の割合が高い事が次のグラフによって分かる。
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他に死亡率に関係する事としてヘルメットの着用率が上げられる。
ヘルメットの有効性については諸説あるがイタルダインフォメーションNo.97によれば、
頭部損傷による自転車死亡事故は64%と多いが、ヘルメットを正しく着用すれば頭部損傷における死亡を4分の1に抑える事が出来るという。
http://www.itarda.or.jp/itardainfomation/info97.pdf
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そしてこのヘルメット着用率も日本はかなり低い。
東京都の調査では自転車利用者の97%が着用していない。
自転車通勤者に限っても着用しているのは8%ほど。
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グラフを使って世界各国と比較してみよう。
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オランダ 0.1%
ドイツ 2%
デンマーク 3%
日本 8%(いつも着用5.3%+着用することが多い2.7% ただし自転車通勤者のみのデータ)
スウェーデン 15%
イギリス 22%
フィンランド 25%
オーストリア 33%
アメリカ 38%
スイス 38%
ノルウェー 不明
ヘルメット着用率の参考にしたサイト
http://www.ctc.org.uk/sites/default/files/file_public/cycle-helmets-evidencebrf.pdf
http://www.cycle-info.bpaj.or.jp/report/jpg/h20_2/h20_2top.html

他に事故率と関係があると思われるのが交通参加者の密度である。
なぜならば同じ交通量であれば狭い範囲で行き交う方が衝突の危険性が増すのは当然と思われるからである。
狭いスケートリンクで、利用者が混雑している時の方がぶつかりやすいのと同様である。
これも日本は特に高い。
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さらに日本の場合は山岳地帯が多く、国土の平野部に人口が集中しているため、数値以上に実際の密度は高い。
下のグラフは可住地面積当たりの人口密度で、日本はもう比較にならない位、ズバ抜けて高い事が分かる。(グラフ引用:http://d.hatena.ne.jp/minerva2011/20111022/1319295465
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それらの事を踏まえてもう一度日本の危険性をグラフで見てみると、
海外と比較して特別に危険な環境とは言えないのでは無いだろうか?

もっともこのままで良いという事はない。
施策を参考にするべき国を考えなくてはいけない。

イギリス・アメリカ車道走行中心のグループではヘルメットの着用率が高いにも関わらず死亡率が高い。
いや死亡率が高いからヘルメットの着用率が高いのか?
いずれにしてもイギリス、アメリカは死亡率が高い。

これらの国の政策をお手本にしようというのが今の日本の流れである。
毎日新聞やこの記事の分析者である古倉氏の働きもあって、
日本はロンドンやニューヨークの車道にペイントだけの自転車レーンを真似る方向で進んでいる。
皆さんの近所でも見かけるようになったのではないだろうか?
(2015年6月6日加筆:ロンドン、ニューヨークでも構造分離式の自転車レーンが増えつつある)
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今回取り上げた毎日新聞でも「欧州をモデルにした自転車レーン」がイラストで掲載されている。
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しかしこれは安全性に定評のあるオランダやスウェーデン、デンマークで見られる分離式の自転車道ではない。
道路事情によりこの方策しか取れないケースもあるとは思うが、最優先でこれを整備している国は少数ではないだろうか。
車道走行、車道レーン中心の国で方針転換が起きているのは以前ブログで紹介した通り。


もう一度グラフを見てみよう。
画像

ひときわ目を引くのがオランダ、スウェーデンの安全性の高さである。
なかでもオランダは人口密度は高く、高齢者の利用も多く、ヘルメットの着用率は著しく低い。
にも関わらず堂々のランキング1位である。

自転車先進国としてゆるぎ無い地位を誇るオランダの交通政策こそ参考にすべきものでは無いだろうか。
幅広い年齢層や多目的の自転車利用をターゲットにしている点など日本の特性に似ている部分も多い。
自転車の平均的な移動速度も速く快適性も備えていると言う。
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オランダの一般的な交差点

では何故、車道から分離された自転車道は安全性が高いのか?
それを知ると歩道通行・車道通行の良い面、悪い面もまた見えてくる。

下のイラストは解りやすいように左側通行で紹介している。
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日本では危険とされ廃止に向かっている自転車横断帯についても考えるヒントを与えてくれている。
横断場所を交差点中心から離す事や、停止位置が前にある事には意味があるのだ。

オランダは歩道と車道の良いとこ取りをしたような構造と言えるのだが、日本の有識者はそれを理解できず「車道レーン」という、優先意識を持って左折車両のすぐ脇に自転車が進入できるインフラを整備し始めている。

特に大型車からは車両の近くを走る自転車が死角に入る傾向があるので、十分注意していただきたい。


私の自転車に関するブログ記事です。

↓第1回 自転車は本当に車道のほうが安全なのか?
http://otenbanyago.at.webry.info/201406/article_1.html

↓第2回 車道走行の危険性を検証する。国土交通省資料のウソ
http://otenbanyago.at.webry.info/201406/article_4.html

↓第3回 自転車−車道と歩道の事故率 毎日新聞を検証(1)
http://otenbanyago.at.webry.info/201409/article_1.html


↓第5回 自転車ナビライン千石交差点の資料を検証する
http://otenbanyago.at.webry.info/201411/article_1.html

↓第6回 ママチャリの走る国は自転車後進国なのか?
http://otenbanyago.at.webry.info/201502/article_1.html

↓第7回 相模原自転車道の新規開通部分と双方向考察
http://otenbanyago.at.webry.info/201502/article_3.html

↓第8回 車道の自転車は認知されやすく安全性が高いのか?
http://otenbanyago.at.webry.info/201505/article_1.html

↓第9回 オランダに自転車道は少ないのか?日本でも不要なのか?
http://otenbanyago.at.webry.info/201505/article_2.html

↓第10回 歩道通行の自転車に交通機能上の利点は皆無か。
http://otenbanyago.at.webry.info/201506/article_1.html

↓第11回 有名なあの図を検証する。
http://otenbanyago.at.webry.info/201510/article_1.html





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